Oldtimer「 COSINA AF ZOOM LENS 28-70mm F3.5-4.8 」

装着できればどんなMF一眼レフもAF一眼レフに!

Text&Photo:ホトグラ。編集部

マウントさえ合えば、どのMF一眼レフカメラでもAF撮影が楽しめた「AF ZOOM LENS 28-70mm F3.5-4.8」。北米ではVivitar名で発売されたほか、望遠ズームの「AF ZOOM LENS 75-200mm F4.5 MC MACRO」も用意されてました。本レンズの発売は1987年、メーカー小売価格は3万9,800円。

一眼レフカメラのAF黎明期とも言える1980年代前半、メーカー各社から様々な試みのAF一眼レフカメラやAFレンズが登場しました。特にユニークだったのはレンズ内に測距用センサーとAF駆動用のモーターを内蔵したもの。測距からピント合わせまで一連の動作をレンズ内で完結していました。今回ピックアップする「コシナ AF ZOOM LENS 28-70mm F3.5-4.8」はそれを受け継ぐもので1987年に登場した交換レンズとなります。当時の主要カメラメーカーのマウントに対応しており、装着できればどんな一眼レフカメラでもAFでの撮影を楽しむことができました。

本レンズのAFはCCDによる位相差検出方式。前玉横にある補助レンズを通して測距を行います。操作の手順はシャッターボタンの代わりに鏡筒側面にあるAFボタンでAFを作動させる以外は、一般的なAFカメラと基本変わりません。カメラを構えピントを合わせたい被写体を画面の中央に置き、レンズをホールドする左手親指でAFボタンを押すとAFを開始。シングルAFの場合、合焦はブザー音もしくは鏡筒のLEDの点滅で知らせます。その後フォーカスロックとなり、ピントを合わせ直すにはAFボタンを押し直します。コンティニュアスAFについても同様で、AFボタンを押し続けると画面中央の被写体にピントを合わせ続けます。

一見ごっつく見えますが、操作部材はON/OFF(MACRO)スイッチと AFモード切り換えスイッチ、そしてAFボタンとシンプルです。

MFでのピント合わせは、レンズ先端ローレットの覗く部分に指を当てて操作します。操作感は正直よくはありません。

最短撮影距離はAF時で1m、MF時では0.35mとなります。さすがに至近距離では補助レンズと撮影レンズのパララックスのため正確に被写体を狙うことは構造的に難しかったようです。それでもMFながら被写体にぐっと寄れるのはありがたく思えます。肝心の写りについては逆光に弱いところも見受けられますが、順光で少し絞り込めばコントラストも高く締まった写りが得られます。絞り開放における画面周辺部の写りはちょっと緩く、色のにじみなども発生しやすいですが、製造された時代とレンズのクラスを考慮するとそう悪いほうではないように思えます。

電源については単四形乾電池3本使用します。どこでも手に入れられる電池としたのはユーザーフレンドリーと考えてよいでしょう。ちなみに中古カメラショップなどで本レンズを見かけたときは、レンズの状態とともにバッテリーボックスのなかの様子も確認してほしいと思います。長期間乾電池を入れっぱなしにしたため液漏れを起こし電源が供給できなくなっているものも多いので要注意です。

ズームリングの指標を黄色の線に合わせるとMFでのマクロ撮影が楽しめます。最短撮影距離は0.35m。

バッテリーは単四型乾電池3本を使用します。中古カメラショップなどで見かけた際は、バッテリーボックスに液漏れの跡があるかないか確認したいところです。

このレンズには別売のアクセサリーとして「AF CONNECTOR CORD」が用意されていました。これは大きめのソフトレリーズボタンにケーブルが付いような形状で、レリーズボタンはカメラのシャッターボタンのケーブルレリーズネジ穴に、ケーブルの先端は本レンズのAFボタン近くにある接点(レリーズアダプターソケット)に装着します。レリーズボタンを半押しするとAF一眼レフカメラなどと同様レンズのAFが作動し、全押しするとシャッターを切ることのできるものでした。中古でもなかなか出てこない珍しいアイテムとなっています。

AFボタンの右にあるソケットはストロボ接点のように見えますが、実際は「AF CONNECTOR CORD」用のもの。AFボタンは一際大きく操作しやすく感じます。

本レンズのAF精度やAFスピードについては、AF一眼レフカメラで一世を風靡した「ミノルタα7000」の登場からすでに2年ほど経ってからの発売であることなど考えてしまうと、当時としても正直時代遅れに感じざるを得ません。特にAFの精度は、フィルムで撮影しサービスサイズほどのプリントで鑑賞する分はさほど支障はないですが、高画素のデジタルカメラで使用し、その画像をパソコンの画面で大きく拡大して閲覧するようなときは厳しく思われます。AFスピードについても現代のデジタルカメラのようにシャッターボタンを半押しした瞬間ピントが合うようなものでも当然ありません。

しかしながら、それでもリリースしたメーカーの姿勢にはある意味敬服するところです。それは、前述しているとおりAF一眼レフカメラを新たに購入しなくても、所有するMF一眼レフカメラで手軽にAF撮影が楽しめるようにしたこと。値段も当時としては手頃で、AFでの撮影の手軽さ、楽しさをより広く写真愛好家に伝えたものと述べてよいからです。AF黎明期の面影を強く残す「AF ZOOM LENS 28-70mm F3.5-4.8」。そのようなレンズがかつて存在したことを知っておいてもよいかと思います。

(了)

小さな看板にレンズを向けて測距しました。絞りは開放ですが、ピントはしっかりと合っています。このような風景スナップではAFの長閑さもさほど気になりません。
ニコンDf・AF ZOOM LENS 28-70mm F3.5-4.8・絞り優先AE(絞りf4.8・1/1250秒)・ISO100・WBオート・JPEG(焦点距離60mm)

MFでの撮影です。絞りは開放f4.8ですが、合焦部分の解像感は高く、良好な写りです。フォーカスリングの操作感は正直あまりいいとは言えません。
ニコンDf・AF ZOOM LENS 28-70mm F3.5-4.8・絞り優先AE(絞りf4.8・1/1250秒)・ISO100・WBオート・JPEG(焦点距離70mm)

こちらも焦点距離70mm、MFでの撮影。絞りについても開放f4.8と同じですが、ピントの合った被写体のシャープネスは高く、ボケ味もズームとしては柔らかい部類と述べてよいものです
ニコンDf・AF ZOOM LENS 28-70mm F3.5-4.8・絞り優先AE(絞りf4.8・1/200秒)・ISO100・WBオート・JPEG(焦点距離70mm)

ピントは画面中央近くのパラソルに合わせたつもりでしたが、結果を見るとピンボケ。AFによるピント合わせのコツは、一度デフォーカスにしてからピントを合わせ直すとよいように思えます。
ニコンDf・AF ZOOM LENS 28-70mm F3.5-4.8・絞り優先AE(絞りf5.6・1/800秒)・ISO100・WBオート・JPEG(焦点距離28mm)

ピントは画面中央付近の新緑に合わせたつもりでしたが、結果を見ると奥の赤い大門に。なかなか飽きさせないAFズームレンズです。
ニコンDf・AF ZOOM LENS 28-70mm F3.5-4.8・絞り優先AE(絞りf4.8・1/100秒)・ISO100・WBオート・JPEG(焦点距離70mm)

逆光ではゴーストが派手に現れます。これを活かせば面白い撮影が楽しめそう。逆光でもAFはしっかり機能しました。
ニコンDf・AF ZOOM LENS 28-70mm F3.5-4.8・絞り優先AE(絞りf8・1/640秒)・ISO100・WBオート・JPEG(焦点距離28mm)

画面中央の消火器の箱にピントを合わせたつもりでしたが、結果はちょっと後ピンとなってしまいました。絞り込んで撮影するのがこのレンズの使い方のキモのように思えます。
ニコンDf・AF ZOOM LENS 28-70mm F3.5-4.8・絞り優先AE(絞りf5.6・1/320秒)・ISO100・WBオート・JPEG(焦点距離50mm)

こちらは狙いどおりに赤い折り畳みのスクーターにピントが来ています。今回はデジタル一眼レフで撮影しましたが、ミラーレスだとよりピントの状態が把握しやすいので、歩留まりが上がりそうです。
ニコンDf・AF ZOOM LENS 28-70mm F3.5-4.8・絞り優先AE(絞りf5.6・1/125秒)・ISO100・WBオート・JPEG(焦点距離50mm)

<仕様表>

COSINA AF ZOOM LENS 28-70mm F3.5-4.8
焦点距離28〜70mm
レンズ構成8群8枚
画角35°18’〜75°13’
絞り羽根枚数7枚
最小絞り値28mm:F22、70mm:F31
最短撮影距離0.35m
フィルターサイズφ52mm
AF方式補助レンズによる位相差検出方式
AFモードシングルAF、連続AF
電源単4型乾電池3本
最大径×長さφ71mm×75.5mm
質量410g(電池を除く)

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