《ホトグラ。インタビューシリーズ第一回》 株式会社ワイドトレード上田晃央社長に訊く「 Leofoto三脚、強さの秘密」

聞き手:大浦タケシ
製品Photo:編集部

脚に貼られた青いシールは人気と信頼の証

その初めはいつ頃だっただろうか。写真・カメラ関連の情報等を仕事柄長年ウォッチしているが、中国の三脚メーカー「Leofoto(レオフォト)」の名を目にする機会がこの数年増している。どちらかと言えば三脚のメーカーあるいはブランドはそれ以前まで大きな変化はなく、時折新興のブランドがお目見えすることはあっても、大勢に際立った変化が生じるようなことは極めて少なかった。そのためLeofotoの躍進には目を見張るものがある。今回、日本の代理店である株式会社ワイドトレードの社長、上田晃央さんにお時間を頂き、Leofotoの成功の秘密などお訊きした。

お話を伺った株式会社ワイドトレード上田晃央社長

『ビジネスは残酷。そしてLeofotoとの出会い

ワイドトレードと言えば、以前は別の中国三脚メーカー日本代理店としてよく知られた会社である。当時、会社の本拠地を新潟から営業のしやすい東京に移すなど、上田社長は精力的に販促活動をされていたことを筆者自身記憶している。ところが、2018年その三脚メーカーから代理店契約を解除すると一方的に連絡があったと言う。

「ビジネスは残酷だと思いました。先方から供給を止めると言われてしまうと、一瞬で会社が終わってしまう。ショックでしたね。ところがビジネスは面白い。今後は写真やカメラとは関係ない商材を扱っていこうと考えている矢先に、どこで聞きつけてきたかは分かりませんが、Leofotoからうちの商品を扱わないかと連絡があったのです」

もちろん上田社長は断る理由などなかった。タイミングよくLeofotoが出店する展示会が中国であり早速向かうことに。ただし、よく知らぬメーカーであったため、期待半分、不安半分のなか成田を飛び立ったのである。

「展示会場で見たLeofotoの製品は、コンセプトそしてモノとしてのつくりがしっかりしているなというのが最初の印象でした。スパイダーなどは金属製の削り出しでしたが、すごく工作精度が高く驚きましたし、指で操作するつまみ類などは凝ったローレット仕上げとするなどつくりがとてもいい。何より価格は値頃感あるものでしたので、この三脚でもう一度出直してみようとその場で決心しました」

その翌年である2019年にパシフィコ横浜で開催されたカメラおよびその関連製品の大規模な展示会「CP +」では、わずか2コマのブースにLeofotoの三脚や雲台を展示。そこに上田社長が立っていることに氏を知る誰もが驚いたのであった。

極めて高い工作精度もLeofotoの特徴であり魅力

2019年2月開催のCP+2019でのLeofotoブース前で写真家に囲まれたLeofoto 鄭社長(左から3人目)と上田社長(右から2人目)(写真:ワイドトレード提供)

取り扱いを開始したLeofotoであったが、上田社長の不安は当時全ての三脚にセンターポール(エレベータ)が無かったことであった。通常三脚は脚を全段伸ばし、それでも高さが不足するときは、センターポールを伸ばすのが一般的な使い方。そのセンターポールが無いのである。Leofotoは脚を全段伸ばした状態が、その三脚の最大高だったのである。


「ユーザーの習慣や使い方にも依るところが大きいのですが、センターポールが無いことにより機動力が上がったというお客さんもいれば、やはりセンターポールが欲しいというお客さんもおられました。一長一短でした。実はセンターポールが無いと言うことで、認知度が上がったのも事実です。安定度の高さなどから次第に写真愛好家や写真家の方々にLeofotoの三脚が浸透していきました。特にブランドに対する先入観のない写真愛好家や写真家には受けがよかった。しかも現実的でよいところも悪いところははっきり言ってくださるので、それがより良い製品をつくる糧にもなりました」

最新のLeofotoマンバOシリーズ(写真はLV-284C+BV-5)

ちなみに現在ではセンターポールを備えた三脚もラインナップされている。もちろん写真家をはじめとするユーザーからのフィードバックを上田社長がLeofotoの社長に対し直々に相談してなし得たものである。コミュ二ケーションの良さ、それに対する反応の素早さもLeofotoならではと言う。

『三脚で大切なのは滑らかさでなく固定力』

現在Leofotoは量販店およびECサイトを中心に販売を行っている。全国に多数の店舗を展開するあるカメラ量販店の場合、お店のスペースや管理上の都合などから店舗にLeofotoの三脚が置かれていることは少ないが、口コミなどから同店のECサイトでは人気の高い製品になっている。さらに首都圏を中心とするカメラ量販店の場合では、海外高級ブランドの三脚と同じ場所に商品が置かれることも多いと言う。


「ECサイトでの購入の多さは指名買いの現れと考えております。カメラ誌などに広告を打ったり、Leofotoのユーザーである写真家さんなどご自身が講師を務める撮影会やセミナーなどで紹介してくださった結果です。本当にありがたいことです。高級ブランドの三脚と並べられるのは、それに負けない品質とつくりのよさ、そして使いやすさを追い求めた結果の現れと思います。実際、見比べていただいても、まったく遜色ないかと仕上がりだと言えます。いずれにしましても市場で支持されている証と自負しています」


三脚といえばスムーズな脚の引き出しや雲台の動きなどが話題になることが多く、評価の対象となる場合も少なくない。ところが、上田社長はそうとは考えていないと言う。


「三脚で大事なのは動きの滑らかさではなく、固定力なのです。しっかりとカメラを固定できること。それが三脚の大切な役割です。たしかにスムーズに脚などが動くことも大切ですが、三脚の本来の役割を考えたとき何よりもまずカメラをしっかりと固定する力だと私どもでは考えています」


まさに目から鱗である。確かに我々が三脚の話をするとき脚や雲台の動きを評価することが多い。しかし、それが三脚としてさほどの意味を持たないことを、上田社長の発言は気づかせてくれるものである。もちろんLeofotoの三脚にもこの思想は強く反映されていることは言うまでもない。

マンバOシリーズではカーボン製の脚ながらワンタッチで強力な固定が可能なレバーロックを採用

『Leofotoを世界のブランドに』

Leofotoの今後についても上田社長に伺った。このブランドが今後どのように展開していくか大いに気になるところである。


「まずはスマートフォンも含め動画にもこれまで以上に力を入れていきたいと思っています。カメラ同様三脚も進化しなければなりません。そのようななかで、動画向け三脚の展開はLeofotoにとってもチャンスと受け取っています。Leofotoではこの度新たな工場を中国で竣工しました。これまでとくらべものにならないくらい広い工場です。製品の品質もより向上すると思いますし、何より動画用三脚や雲台などをはじめ新しい製品の開発製造にもスピードと余裕を持って対応できます。世界のブランドにしたいと言うLeofotoの社長の思いの詰まった工場です」

2017年3月、Leofoto 鄭社長と上田社長が最初に出会ったときのスナップ(写真:ワイドトレード提供)

最後に嬉しい情報を上田社長から教えていただいた。それは待望のショールーム開設。国産メーカーの中には直営ショップのなかに三脚を展示するところもないわけではないが、海外のメーカーも含めショールームらしいショールームを持つところはない。多くの場合、カメラ量販店などがその役割を担っているのが実情だ。


「西川口駅の近くに8月末を目標に、Leofotoのショールームをオープンする予定です。実際に手にとって試せるばかりか、弊社の社員から説明を受けることもできます。もちろん修理の受け付けや部品の販売なども行います。小規模ですが、写真ギャラリーの機能も持たせますので、LeofotoユーザーやLeofotoが気になる写真愛好家の方々など期待してほしい。そして、ぜひ足を運んでいただければと思います」

(了)

株式会社ワイドトレード
https://widetrade.jp

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