【コラム】今日の一冊 「月3万円ビジネス 100の実例」 古屋淳二(虹ブックス共同管理人)

Text&Photo:古屋淳二

静岡県は富士宮市のいわゆる朝霧高原に、東京から四国経由で越してきてちょうど5年。夫婦と3人の子どもたちとの田舎暮らしもだいぶ慣れてきた。昨夏からは、敷地内にある納屋をリノベーションして、マンガ多めの私設図書室兼コワーキングスペース「虹ブックス」をつくり、夫婦で運営している。この連載では、田舎暮らしのエピソードを交えながら、図書室の蔵書をご紹介していきたいと思う。そして「ちょっと朝霧高原まで行ってみようかしら」などと思っていただければうれしいです。

初回はこの本。

「藤村靖之『月3万円ビジネス 100の実例』 晶文社 2015年」

この地に来てから、「仕事は何してるの?」とよく聞かれる。何回も聞かれる。このあたりに住む人は、たいていは街の方まで働きに行く会社員だったり、酪農や林業、キャンプ場経営という自営業だったり、はたまた陶芸家です、などと答えはとってもわかりやすい。だから仕事がわかりにくいと、ましてや昼間ずっと家にいたりすると、田舎ではちょっとした怪しい人になってしまう。

わたしの仕事はというと、虹ブックスではほとんど儲けなんて出ないので、「虹霓社」[コウゲイシャ]という名前で、つげ義春さんの公認グッズを夫婦で作ってネット通販したり、小さな出版社として本を作ったり、フリーランスでWebやパンフレット制作のお手伝いさせていただいたり、とまあ色々とやってる。どれも一つではそれほどの稼ぎにはならないのだが、いくつかやるとなんとか家族で食べていけるくらいにはなる。今の家はたまたま家賃も安くしてもらってるし(このあたりも最近の移住人気で家賃が軒並みアップしてるらしい)、暖房もご近所からいただく木材で薪ストーブを焚いているので灯油もあまり買わずに済み、燃料代がけっこう節約できている。

私設図書室兼コワーキングスペース「山の読書室/虹ブックス」(http://kougeisha.net/?page_id=1141

そう、これこそが今回紹介する「月3万円ビジネス」の極意。つまり、たった「月3万円」でも5個あれば15万円、10個あれば30万円になるのだ。同書には、自分の得意を活かしたモノを作って売ったり、ワークショップで教えたり、誰かの手助けをしたり、という月に3万円しか稼げない100個の実例がカテゴリーに分けて掲載されている。初版が2015年だから、このコロナ禍で少し状況が変わった面もあろうが、ヒントが満載なことは確かだ。得意や好きなことならやること自体が楽しいし、何より3万円ビジネスは借金してまですることではないからリスクもない。会社勤めの方なら、まずは副業からはじめてみることだって可能な気軽さなのだ。

『月3万円ビジネス」とは月に3万円しか稼げないビジネスのことだ。いいことしかテーマにしない。このビジネスはたくさん有る。なにしろ月3万円しか稼げないから、競争から外れたところにある。奪わないで分かち合う。みんなで愉しみながら仕事を創る……。(本書カバーより)』

そして今日もまた、わたしは返答に窮する。
「えーと、、、仕事は、、、色々やってます」

古屋淳二(こや じゅんじ)
虹ブックス共同管理人
1972年、群馬県生まれ。東京で業界紙誌のライター、雑貨店経営、編集系制作プロダクションなどを経て独立。東日本大地震と子ども誕生を機に2014年から徳島県神山町で田舎暮らしをはじめる。2017年には朝霧高原に居を移して築50年の古家をリノベして家族5人で暮らす。「虹霓社」として編集・出版業のかたわら、2021年からは私設図書室兼コワーキングスペース「山の読書室/虹ブックス」を夫婦で運営している。


虹ブックス
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虹霓社
http://kougeisha.net/

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