Oldtimer「Nikon LW-NIKKOR 28mm F2.8」

水中で使えない! 
NIKONOS用広角レンズ

Text&Photo:ホトグラ。編集部

「NIKONOS-V」に装着した「LW-NIKKOR 28mm F2.8」。いわゆる“カニ爪”が無いだけで、MFのNikkorレンズとよく似た外観です。中古市場での相場は3万円から5万円前後のようです。

NIKONOS(ニコノス)は、35mmフィルムを使用するレンズ交換式水陸両用カメラのシリーズ。1964年発売の初号モデル「NIKONOS」を皮切りに、「NIKONOS II」「NIKONOS III」「NIKONOS-IV」「NIKONOS-V」と代を重ね、水中のほか暴風雨の中や砂埃が激しく舞うような悪条件でも活躍しました。ちなみにシリーズ最終モデルの「NIKONOS V」は2001年に製造を終えています。

また、水中専用モデルでAF対応の「NIKONOS RS」も1990年代販売されましたが、同機は他のNIKONOSとマウントが異なるなど独自性の強いモデルでした(ここで述べるNIKONOSシリーズとは、「NIKONOS RS」を除いたものです)。そのNIKONOSシリーズですが、ラインナップする交換レンズのなかで1本だけ外観も性格も異なるレンズがありました。それが今回ピックアップする「LW-NIKKOR 28mm F2.8」です。

フォーカスリングの回転角度は小さいうえに、その動きはシーリングのためかちょっと硬めとなっています。最短撮影距離は0.5m。

本来ニコノス用の交換レンズは水陸両用もしくは水中専用とし、シーリング強化とグローブをしてもピントや絞りの設定ができるようレンズ鏡筒の左右にそれぞれのノブを備えています。さらにレンズ前面には水中でも見やすいよう被写界深度が確認できる撮影距離目盛と絞り目盛りを備えるなど、交換レンズとしてはちょっと特殊な構造としています。

一方「LW-NIKKOR 28mm F2.8」は一般的なMFレンズと同様フォーカスリングと絞りリングを備えたスタイルで、しかも意匠は“カニ爪”こそ無いもののMF一眼レフ用ニッコールに準じたものです。このように本レンズが他のNIKONOS用レンズと異なる外観とした理由は、陸上専用であるため操作性を考えたとき一般的な構造としたほうが馴染みやすいことや、水陸両用もしくは水中専用でないことをアピールするためだったのではないかと考えられます。

鏡筒に貼れた水中で使用できないことの書かれたシール。とは言え徹底したシーリング処理が施されているので、多少の雨のなかや水しぶきがかかっても使用に問題ありません。

水中では使えない「LW-NIKKOR 28mm F2.8」ですが、それでも高い防塵防滴性能を誇ります。マウントには他のニコノス用同様Oリングが備わりますし、フォーカスリングの操作感は重く、回転角度が小さいのもそのためです。雨や砂・ホコリの舞うようなかで使用してもまったく問題はなく、アウトドアでのヘビーデューティな用途に対応した交換レンズと述べてよいものです。

光学系については「Nikon LENS SERIES E 28mmF2.8」と同じと言われています。レンズシリーズEは1970年代後半から1980年代にNikkorレンズの廉価版として発売されましたが、同レンズはなぜか輸出専用で国内での販売はありませんでした。どのような経緯で「Nikon LENS SERIES E 28mmF2.8」の光学系を本レンズに用いるようになったのか実際のところは分かりませんが、おそらくコストなどの理由が大きかったのではと今となっては考えられます。

マウントはもちろんニコノスマウントとなります。レンズのマウント部に取り付けられたOリング(マウントを横から見て中央の黒いリング)は高い防塵防滴性能を誇る証。

本レンズは基本的に「NIKONOS-IV」と「NIKONOS-V」で使うことを前提にしていたのも特徴のひとつです。この2つのニコノスのファインダーは焦点距離35mmに対応するフレームを備えていますが、そのフレームよりも外側、画面いっぱいが焦点距離28mmに対応するよう設計されていたからです。もちろん他のニコノスでも使えるのですが、搭載するファインダーの外枠が28mmよりも小さいので、そのことを理解したうえで使うか、28mmの画角を持つ外付けファインダー等を装着する必要があります。

「LW-NIKKOR 28mm F2.8」は、「Nikon LENS SERIES E 28mmF2.8」と異なり国内販売もされ、当時のニコノスのカタログなどにもしっかり記載されていました。しかしながら、注目されることは少なく、また購入したニコノスユーザーもそう多くはなかったのでしょう。現在の中古市場では見かけることの少ないレアなNikkorレンズのひとつとなっています。

(了)

フィルター径はφ52mm。そのため、一眼レフ用Nikkorのフィルターやフードが装着可能です。写真のフードはニコン純正の「HN-2」(販売終了)を装着したところ。

NIKONOSで本レンズを使用するとピント合わせが目測であるため、どうしても引きの写真が多くなってしまいます。そんなところも人気の出なかった理由のひとつなのかもしれません。
NIKONOS-V・LW-NIKKOR 28mm F2.8・フジカラー100

「NIKONOS-IV」または「NIKONOS-V」に装着した場合、内蔵するファインダーの外枠いっぱいがちょうど28mm相当となります。撮影では35mm用のフレームに戸惑わないよう留意する必要があります。
NIKONOS-V・LW-NIKKOR 28mm F2.8・フジカラー100

絞り値は失念しましたが、おそらく絞り込んで撮影していると思われます。画面四隅の写りは少し緩く、デジタルカメラで撮影するとよりはっきりと現れてきそうです。
NIKONOS-V・LW-NIKKOR 28mm F2.8・フジカラー100

雨の降り始めに撮影したカットです。NIKONOSとの組み合わせであれば、そのような状況でもまったく気にせず撮影に臨めます。
NIKONOS-V・LW-NIKKOR 28mm F2.8・フジカラー100

雨天での撮影です。絞りはF4であったと記憶しています。いわゆる近景と言われる撮影距離ですが、ピントはほぼ問題なく納得の結果が得られました。
NIKONOS-V・LW-NIKKOR 28mm F2.8・フジカラー100

ピントは無限遠としています。絞り込んでいるため、画面全体パンフォーカスとなっています。細かな砂の舞う海辺でも安心して撮影に臨めるレンズです。
NIKONOS-V・LW-NIKKOR 28mm F2.8・フジカラー100

<仕様表>
LW-NIKKOR 28mm F2.8
焦点距離28mm
レンズ構成5群5枚
画角74°
絞り羽根枚数7枚
最小絞り値F22
最短撮影距離0.5m
フィルターサイズφ52mm
最大径×長さφ68.5mm×57mm
質量240g

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