ピクトリコ ショップ&ギャラリー/18時まで
©️清水哲朗
「野生のユキヒョウが撮りたい」。その一心で何度もモンゴル・南ゴビへ通った。最初の取材では1ヶ月山に籠もれば撮れると踏んでいたが望み叶わず。実際は遊牧民が「あそこに3頭いる」と見つけだしてくれたにも関わらず、見えなかった。1km以上離れていたとはいえ双眼鏡を覗いても動いているユキヒョウを見つけ出せなかった。アイベックスやアルガリなど単色無地の動物は容易に見つけられるのに最大目的であるユキヒョウだけ認識できない自身が憎かった。
翌年、夜明け前の山で遊牧民と身動きせずに待ち構えていると谷を挟んだ斜面にユキヒョウが現れ、あまりの美しさに息を呑んだ。目立つと思っていたヒョウ柄(丸い斑点)は保護色となり、岩に溶け込んでいた。ただ、僕がユキヒョウを認識できたのは遊牧民よりもはるかに遅かった。遊牧民は岩陰に潜んでいる姿を30分前から見ていたという。当時24歳の僕の目はモンゴルでは開放値の暗い、低解像の安物レンズだった。それでも念願のユキヒョウが撮れ、意気揚々と日本へ帰国。フィルム現像するとユキヒョウは想像以上に小さく写っていた。
四切プリントで1cm。人に見せると「どこにいるの」と笑われた。モンゴルのことも知らず、言葉もできず、動物撮影の勘も鈍く、視力も体力もない自分を反省し、ユキヒョウ取材はしばらく休むことにした。 あれから20年超「ユキヒョウを撮って世界進出」の野望はなくなったが、風景、スナップ、ドキュメンタリーとモンゴルを多角的に取材・発表してきたことで心に余裕が生まれた。自身の目は相変わらずの安物レンズで老眼も加わったが、原点のユキヒョウ取材を再開するとこれまで見えなかった動物たちが風景から浮かび上がって見えた。どの動物も素早く僕を見つけ、こちらを見ていた。これまでも見えていなかっただけで彼らからはずっと見られていたのかもしれない。
優秀な小型軽量デジタル機材が取材を後押しし、100mの至近距離からのユキヒョウ撮影にも成功。写真展『 Color of Rocks 』ではユキヒョウ、ゴビグマ、オオカミ、ヒゲワシ、トビネズミ、四季折々の風景など知られていないゴビを感じる展示構成となっている。
出展作品数:24点(カラー)
(写真展案内より)
©️清水哲朗
(作家プロフィール)
清水 哲朗(しみず てつろう)
1975年横浜市生まれ。日本写真芸術専門学校卒業後、写真家・竹内敏信の助手を務め、23歳でフリーランスに。1997年よりライフワークとしているモンゴルでは独自の視点で自然風景からスナップ、ドキュメントまで幅広く撮影。2018年にはTBS「クレイジージャーニー」で現地での取材活動が取り上げられた。主な出版物は写真集『CHANGE』『New Type』『轍』『おたまじゃくし Genetic Memory』、写真絵本偕成社世界のともだちシリーズ『モンゴル』、フォトエッセー『うまたび-モンゴルを20年間取材した写真家の記録-』。個展開催多数。主な受賞暦は第1回名取洋之助写真賞、2014日本写真協会賞新人賞、2016さがみはら写真新人奨励賞。公益社団法人日本写真家協会会員。 https://tokyokarasu.com/
会場:ピクトリコ ショップ&ギャラリー(東京都墨田区横網1-2-16 東誠ビル5F)
会期:2023年3月7日(火)〜3月18日(土)
開催時間:11時00分から18時00分まで(日曜および月曜休館/入場無料)
http://www.pictorico.jp/shop/
*最新の情報を掲載するよう心がけておりますが、ギャラリー等の都合により会期等が変更になっている場合があります。ギャラリーホームページなどでご確認のうえお出かけください。